電圧降下

電気回路

この記事では電気回路で生じる電圧降下ついて説明をします。
電圧降下とは何かから、実際の設計でどのような時に考慮するのかまでを取り扱います。

【まとめ】電圧降下
最初にまとめです。
電圧降下とは

電圧降下について、以下の図で説明をします。

\(R_1\)の手前の電圧は電源電圧と同じ3Vです。
\(R_1\)にはオームの法則より\(V_1\)=\(IR_1\)=1Vの電位差が生じます。
そのため、 \(R_2\)の手前の電圧は2Vに降下します。
同様に、\(R_2\), \(R_3\)でも\(V_2\),\(V_3\)=1Vの電位差が生じ、電圧は1V、0Vと降下していきます。

このオームの法則により抵抗に生じる電位差を電圧降下(voltage drop)と呼びます。

また、電圧降下の方向は低い方から高い方へなので注意しましょう。

 

電圧降下を意識する状況

基板単体の回路設計では電圧降下を意識することはありません。
電圧降下を意識することになるのは、下図のように電源とそこから給電されるデバイスが離れており、長い電源ケーブルで接続する必要がある場合です。
電源ケーブル長が数m程度だと全く問題ないが、数百mにもなるとその抵抗値は無視ができません。

電源ケーブルによる電圧降下の影響は以下の通りです

  • デバイスに供給される電圧が正常作動範囲を下回り、正常作動しなくなる。
  • 電源ケーブルに流れる電流により損失が生じる。

具体例を示します。
電源装置とデバイスを電源ケーブルで接続した状態の等価回路を以下に示します。

ここでは電源ケーブルの抵抗値を\(R_c\)とします。
往復で2本なで、抵抗も2つあります。
仮の値として、負荷で消費する電力を1W、ケーブルの抵抗を5Ω、電流を0.4Aとします。

このとき、負荷の電圧降下は2.5Vとなり、もし、負荷に必要な電圧が2.5V以上、例えば3.3Vだったりした場合は正常にしなくなります。

また、電源ケーブルには往復で4Vの電圧降下が生じ、電力として1.6Wを消費することになります。本来消費したい負荷の1Wに対して1.6Wが余分に消費されることになります。

電源ケーブルによる電圧降下の対策

電源ケーブルの抵抗値による電圧降下の対策としては以下があります。

  • 電源ケーブルを太くして抵抗値を下げる
  • デバイスの消費電力を下げる
  • 電源電圧を上げる

電源ケーブルを太くすることは寸法、重量の制約より限界があります。

消費電力の低減も技術的に限界があり、また性能とのトレードオフになっているため、むやみに下げることもできません。

電源電圧を上げることは比較的容易にできますが、こちらも効果に頭打ちがあります。
それについて以下で説明します。

キルヒホッフの第2法則より、回路に流れる電流は以下のようになります。

上式で「±」のうち、「+」は電源電圧を上げるほど電流が大きくなり、負荷の等価抵抗\(R_L=P_L∕I^2\)が限りなく小さくなります。。
これは、例えば負荷が故障し短絡したような場合であり正常な状態ではないため、正常な状態の方の「-」の方となります。

上式で電流を計算した結果を以下に示します。
また、合わせて全体の消費電力を計算した結果も記載します。
ここではRc=5Ω、PL=1Wとし、電源電圧を10Vから100Vまで振っています。

電源電圧を倍にすると電流は半減するという関係になっています。
そのため、最初は電流低減の効果が大きいが、途中から鈍化してしまいます。
消費電力で見ると、40Vを超えたあたりから差がほとんど見られなくなります。

また、実際の回路では電圧によって負荷回路の効率が変化するため、このグラフのように右肩下がりではなく、途中で上昇に転じる場合もあります。
大事なのは実際の負荷回路で電源電圧値を振ってみて、特性を把握し、合わせこむことです。

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