この記事では電気回路の一種であるRL直列回路の過渡現象について取り扱います。
RL直列回路のスイッチをOFFにした後の電流、電圧値がどうなるのか、その傾向についてグラフを用いて説明します。
【まとめ】RL直列回路の過渡現象グラフ(スイッチOFF)
RL直列回路の過渡現象
RL直列回路のスイッチをOFFにすると、直流電源からの電力供給は途絶えますが、それまでにインダクタに蓄えられたエネルギーが放出されることにより電流が一時的に流れます。
これがRL直列回路のスイッチをOFFにした時に生じる過渡現象です。
RL直列回路のスイッチをOFFにした時の過渡現象における電流と電圧の式は以前の記事で導出しました。
本記事では導出した式をグラフにして過渡現象を視覚的に説明します。
電流のグラフ
RL直列回路のスイッチをOFFにしたときの過渡現象における電流\(i\)の式は以下の通りです。
この式よりグラフは以下となります。
スイッチをOFFにした直後、初期状態の\(i\)はスイッチONで流れていた\(E/R\)[A]です。
そこから指数関数的に減少し、定常状態である0[A]に収束していきます。
収束に要する時間は時定数\(\tau=L/R\)に依存します。
感覚的に時定数の影響が分かるように、時間軸上に時定数が記載されていることがあります。
これはスイッチをOFFにした\(t=0\)のときの接線と\(i=0\)の交点が\(\tau\)となるためです。
\(t=\tau\)のときの\(i\)は、中途半端ですが、初期値の0.368倍になります。
定常状態がどこからか、という厳密な定義はありません。
しかし、有効桁数3桁で観測をしているなら、初期値から0.001倍となる\(t=6.91\tau\)以降ですと測定結果に変化が無くなるため定常状態といって差し支えありません。
なお、初期値の0.1倍となるのは\(t=2.30\tau\)、0.01倍だと\(t=4.61\tau\)です。
時定数の影響を見るために、インダクタンスを変更した場合のグラフを以下に示します。
速くOFFへ切り替えるためには時定数を小さくするしかありません。
そのためには抵抗を大きくするか、インダクタンスを小さくするかの2択となります。
しかし、直列抵抗を大きくすると、その分電力を無駄に消費したりしますので現実的ではありません。
代わりにインダクタンスの値で時定数を調整します。
要素の電源電圧、抵抗、インダクタンスが異なっていても、初期値、時定数が同じになれば過渡現象は同じになります。
先のグラフに10V、10Ω、10mHの例を重ねたものを以下に示します。
電圧のグラフ
RL直列回路のスイッチをOFFにしたときの過渡現象における、抵抗とインダクタの電圧\(v_R,v_L\)は次式で表されます。
上式より\(v_R,v_L\)のグラフは以下となります。
\(v_R\)と\(v_L\)は釣り合っており、電力源である\(v_L\)の大きさが減少するにしたがい\(v_R\)も減少し、0[V]へ収束していきます。
電源電圧が5Vだと、CMOSのLowレベルである1.5Vになるのは\(t≒1.2\tau\)のとき、TTLのLowレベルである0.8V以下だと\(t≒1.8\tau\)です。
グラフの条件ですと\(\tau=1\)msですので、\(t=1.2\)msのときに1.5V、\(t=1.8\)msのときに0.8Vとなります
その他
電気回路全般については以下をご覧下さい。
コメント