水力発電に用いられる水車の仕組み

水力発電

この記事では水力発電に用いられる水車の仕組みについて説明します。
水車の外観についてはご存じの方も多いと思いますが、「なぜ回るのか」を正しく説明できるでしょうか。
水がなぜ水車を回せるのか、その力が働く仕組みを本記事では明らかにします。

【まとめ】水力発電に用いられる水車の仕組み

最初にまとめです。

水力発電に用いられる水車の仕組みのまとめ

水車の概要

水車は複数の構成要素から成り立っており、その構成要素には水車の種類によって若干の違いがあります。
共通している構成要素はランナ(羽根車)であり、回転する水車本体のことを指します。
ランナには羽根がついており、羽根は流れてくる水からエネルギーを受け取ることでランナを回します。

水車は水の位置エネルギーをそのまま用いる、用いない、の2つに分けられます。
水の位置エネルギーをそのまま用いる水車は重力水車と呼ばれます。
一方、水の位置エネルギーをそのまま用いないタイプは、水を水圧管から落下させ、位置エネルギーを運動エネルギーと圧力エネルギーに変換します。
このタイプには衝動水車反動水車があります。

以降で重力水車、衝動水車、反動水車の仕組みについて説明します。

重力水車の仕組み

重力水車は、水の位置エネルギーをそのまま利用し、重力でランナを回します。
流れてきた水がランナの羽根に載ると羽根に重力が加わりランナを回します。

大きな落差は必要ないため平地などにある小さな落差で利用することができます。

衝動水車の仕組み

衝動水車は、水の運動エネルギーを衝動力に変換しランナを回します。
水車内に流れてきた水がランナの羽根に当たると、水は勢いを失う、つまり減速し、運動エネルギーを失います。
水から失われた運動エネルギーは羽根に衝撃力を加え、ランナを回す動力、すなわち衝動力となります。

衝動水車は圧力エネルギーを利用しません。
エネルギー効率を上げるために、圧力エネルギーは運動エネルギーに変換されます。
水圧管の先に接続されたノズルで水流を絞めて噴射することにより、圧力エネルギーは運動エネルギーに変換されます。

ランナには水が飛び散らないようにケースが取り付けられていますが、密閉構造ではなく大気に開放されています。
そのため、ランナから出た水は自然落下していきます。

反動水車の仕組み

反動水車は、水の運動エネルギーを衝動力に、圧力エネルギーを反動力に変換しランナを回します。
水車内に水が流入するときは衝動水車と同様に運動エネルギーを衝動力に換えます。
衝動水車と異なる点は水がランナから流出するときです。
反動水車のランナは密閉構造のケーシングで覆われているため、水は圧力でランナから押し出されます。
このとき圧力エネルギーは仕事を行ったため失われます。
水から失われた圧力エネルギーは水を押し出す際に反力を羽根に加え、ランナを回す動力、すなわち反動力となります。

ランナから出た水は吸出し管に流れます。
吸出し管はランナの出口と放水面を接続する密閉された管です。
吸出し管があると流出する水の圧力を上げることができるため、水車の効率が上がります。

吸出し管を長くする、すなわち水車を高くすると効率は上がりますが、キャビテーションの影響が大きくなります。
キャビテーションとは圧力が下がり飽和水蒸気圧以下になると気泡ができることです。
気泡が潰れるときに水車を壊食させたり、振動や騒音を増大させたりして悪影響が出ます。
キャビテーションの影響を小さくしたい場合は吸出し管を短くする、すなわち水車を低くします。

おわりに

以上が水力発電に用いられる水車の仕組みです。

水の位置エネルギーをランナに伝えて回転させる仕組みで水車は分類することができます。
重力としてランナを回す重力水車、運動エネルギーでランナを回す衝動水車、運動エネルギーと圧力エネルギーの両方でランナを回す反動水車の3種類です。

本記事がみなさんの理解の一助になれば幸いです。

その他

発電全般については以下をご覧下さい。

 

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