形態論と形態素

文章の書き方
この記事では形態論と形態素について説明します。
文法を学ぼうとしたときに形態論という単語が突然出てきて面食らっていないでしょうか。
形態論と形態素は学校文法では学ぶことのない言語学の用語です。
形態論と形態素について学び、文法の理解を深めましょう。
【まとめ】 形態論と形態素

最初にまとめです。

形態論と形態素 まとめ

 はじめに

形態論は単語の構成と機能の仕組みのことで、派生形態論と屈折形態論に分けることができます。
形態論で論じられる形態素とはそれ自体で意味を担うことのできる最小の言語単位で、語彙的または文法的な意味を有しており、他の形態素に対して自由に振舞えるのかそれとも拘束されるのかで分類ができます。
形態素が実際に表現されるときは形態と呼ばれ、元の形態素と異なる異形態で現れることもあります。

形態論

形態論(morphology)とは単語の構成と機能の仕組みのこと、またはそれらを研究する言語学の分野の1つです。
形態論は派生形態論と屈折形態論の2つに大別されます。

派生形態論

派生形態論(derivational morphology)は語構成論または語形成論とも呼ばれ、単語の構成に関わる領域です。
単語の構成とは具体的に、単語を構成する形態素とは何か、形態素の種類,形態素の配列、配列後の形態素の変形、複数の形態素から成る単語の構造などを対象とします。

屈折形態論

屈折形態論(inflectional morphology)は、単語の機能に関わる領域です。
単語の機能とは具体的に、単語とは何か、単語の種類、単語は品詞ごとにどのような文構成の機能をもっているのか、単語は文構成の機能を果たすためにどのような語形変化をするのか、語形変化はどのように実現されるのか、語形変化によって表される文法的意味にはどのようなものがあるのかなどを対象とします。

形態素

形態素(morpheme)とは、それ自体で意味を担うことのできる最小の言語単位のことで、形態素が1つ以上集まることで語が形成されます。
形態素は音素記号で表し、形態素と形態素との境界は”-”(ハイフン)でつなぎます。

具体例を以下に示します。
①例文:
太郎君は静岡大学で日本語教育を学んだ。
②“/”で形態素単位に分ける:
/ 太郎 / 君 / は / 静岡 / 大学 / で / 日本 / 語 / 教育 / を / 学ん / だ。 /
③音素記号で表し、”-”でつなぐ:
/taroR-kuN-wa sizuoka-daigaku-de nihoN-go-kyoRiku-o manaN-da/

形態素は語彙的か文法的か、もしくは自由か拘束されているかで分類することができます。

語彙的形態素と文法的形態素

語彙的形態素(lexical morpheme)は語彙的な内容を表す形態素で、文法的形態素(grammatical morpheme)は文法的な機能を表す形態素です。

上記の例だと、「太郎」や「君」、「静岡」、「大学」、「日本」、「語」、「教育」、「学ん」が語彙的形態素、「は」や「で」、「を」、「だ」が文法的形態素になります。

自由形態素と拘束形態素

自由形態素(free morpheme)は単独で語を構成できる形態素拘束形態素(bound morpheme)は単独で語を構成できない形態素です。

学校文法では、単独で語を構成できることを自立できるといい、その語を自立語と呼びます。一方、単独で語を構成できないことを自立できないといい、その語を付属語と呼びます。

上記の例だと、「太郎」や「静岡」、「大学」、「日本」、「教育」が自由形態素、「君」や「は」、「で」、「語」、「を」、「学ん」、「だ」が拘束形態素になります。

文法的形態素は他の語や形態素と結びつくため基本的に拘束形態素になります。
語彙的形態素は自由形態素になれるものもあれば、「君」や「語」、「学ん」のようにその前後の形態素と結びついて意味を成す拘束形態素になるものもあります。

形態と異形態

発話・文中で実際に現れる形態素形態(morph)と呼び、元の形態素と形が異なるときは異形態(allomorph)と呼びます。ただし、日本語の訓読みと音読みは異形態ではありません

日本語だと生き物の数を数えるときに「匹」を用い、形態素を/-hiki/と表します。実際に数を数えるときには2,4,5,7,9は元の形態素と同じ/-hiki/という形態で現れますが、1,6,8,10は/-piki/、3は/-biki/という異形態で現れます。
また「匹」の訓読みの形態素は/-hiki/ですが、音読みの形態素は/-hitu/であり、異形態ではなく別の形態素という扱いになります。

おわりに

以上が形態論と形態素の説明です。

形態論は形態素などの単語の構成を対象とする派生形態論と語形変化など単語の機能を対象とする屈折形態論から成ります。
形態素はそれ自体で意味を担うことのできる最小単位で、語彙的形態素と文法的形態素があります。
文法的形態素は基本的に拘束形態素ですが、語彙的形態素は自由形態素の場合もあれば拘束形態素の場合もあります。
形態素は発話・文中で現れるとき形態と呼ばれ、特に元の形態素と形が異なるときは異形態と呼ばれます。

 

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