文法範疇とは

文章の書き方
この記事では文法範疇について説明します。
文法について学ぼうとしたときに文法範疇という言葉が突然出てきて困惑していないでしょうか。
それは国語文法では習っていないためで、文法範疇は言語学由来の言葉です。
この記事を読めば文法範疇とは何かが分かり、文法への理解も深めることができるでしょう。
【まとめ】 文法範疇とは

最初にまとめです。

文法範疇 まとめ

 はじめに

文法範疇は文法的な情報を分類したものです。
接辞や屈折などの形で表現され、場合により他の語の形も変えます。
文法範疇の要素は素性と呼ばれ、性や数、人称など様々な素性があります。

文法範疇とは

文法範疇(grammatical category)は文法カテゴリーとも呼ばれ、言語による情報伝達において、文法的な情報を分類したものです。
言語による情報伝達における最小単位である文は節、句、語、形態素まで分解することができます。
形態素は語彙的な形態素かどうかで2種類に大別することができます。
語彙的な形態素は語彙的形態素と呼ばれ、単独で意味を持ちます。名詞や動詞、形容詞、副詞などが語彙的形態素です。一方、語彙的ではない形態素は文法的形態素と呼ばれ、文法的な機能を表します。助詞や助動詞、活用語尾などが文法的形態素です。
これら語彙的な情報を含まない文法的な情報を分類したものが文法範疇です。

文法範疇は言語でどのように表現されるのか

文法範疇の表現方法は言語ごとに異なり、接辞や屈折による形態論的な表現のほか、接語や語順による統語論的な表現、使用する語を使い分けるなどの語用論的な表現があります。

複数の表現方法がありますが、一般に文法範疇といった場合、語形変化を伴うものを指すことが多いようです。

同じ文法範疇に属する要素からはただ一つが選択され(排他的である)、必ず表現します。

文法範疇によって別の語の形が変わることがある

ある語や句の文法範疇によって別の語の語形が変わることがあり、これを一致(agreement)といいます。
一致を起こす文法範疇は素姓(feature)と呼ばれ、その文法範疇による分類に応じた値(value)を持ちます。
文中で一致を引き起こす要素をコントローラー(controller)、語形が変わる要素をターゲット(target)と呼びます。

どの文法範疇で一致が起きるかは各言語によります。
例えば、英語だと数によって動詞の形が変わるため一致がありますが、日本語にはありません。
逆に、日本語だと名詞の種類によって数詞の語尾が変わるため一致がありますが、英語にはありません。

文法範疇には何があるのか

文法範疇を構成する要素は素性(feature)と呼ばれ、性や数、人称、格、定性、敬語、時制(テンス)、相(アスペクト)、法(ムード)、態(ヴォイス)、極性(肯定と否定)、他動性、証拠性、主題などが素性としてあります。

全ての言語が全ての文法範疇を有している訳ではなく、どの文法範疇を有するかはその言語の歴史的・文化的背景に依ります。
日本語の文法範疇には格、敬語、時制、相、法、態、極性、主題があります。

  •  性(gender):
    名詞の種類に関する素性
    名詞を男性、女性、中性の3つに区別し、屈折などで違いを表現する
  • 数(number):
    対象の数に関する素性
    対象の数を単数、複数などに区別し、屈折や接辞で違いを表現する
  • 人称(person):
    動作・状態の主体に関する素性
    主体を発話の話し手、聞き手、それ以外に区別し、屈折や接辞で違いを表現する
  • 格(Case):
    名詞が他の単語と結ぶ関係に関する素性
    関係を主格、対格、与格などに区別し、接辞や接語、語順で違いを表現する
  • 定性(definiteness):
    対象の限定に関する素性
    対象が限定されるかどうかを区別し、冠詞や助詞などの接語で違いを表現する
  • 敬語(honorifics):
    人物の社会的地位に関する素性
    主体や相手、話題中の人物との社会的地位を区別し、接辞や接語、屈折、語用などで違いを表現する
  • 時制(tense):
    発信内容の時に関する素性
    発信する時を基準として発信内容の時を過去や現在、未来などに区別し、屈折や接語などで違いを表現する
  • 相(aspect):
    動作や事態の局面に関する素性
    動作や事態を完成度や時間軸における局面を完結や未完結、継続的、断続的、瞬間などに区別し、接辞や屈折などで違いを表現する
  • 法(mood):
    発信者の判断・態度に関する素性
    事態や相手に対する発信者の判断・態度を断定、疑義、命令、可能などに区別し、屈折や接辞、接語、語用などで違いを表現する
  • 態(voice):
    発信者の視点に関する素性
    動作の方向性を発信者の視点に基づいて能動態や受動態などに区別し、屈折や接辞、接語などで違いを表現する
  • 極性(polarity):
    文の真偽に関する素性
    文を真や偽、肯定や否定などに区別し、屈折や接辞、接語などで違いを表現する
  • 他動性(transitivity):
    動詞と目的語の関係に関する素性
    目的語の有無で動詞を自動詞や他動詞に区別し、接辞や屈折、接語、語順で違いを表す
  • 証拠性(evidentiality)
    発信内容の証拠に関する素性
    証拠の有無や出所を区別し、接辞や接語などで違いを表現する
  • 主題(theme)
    発信内容における中心的な対象に関する素性
    主題と主語を区別し、接語や語順などで違いを表現する
おわりに

以上が文法範疇です。

文法範疇とは語彙的な情報以外の文法的な情報の分類です。
文法範疇は接辞や屈折などで表現され、文法範疇の対象となる語以外の語の形を変えることもあります。
日本語の文法範疇には格や敬語、時制、相、法、態、極性、主題があり、何を文法範疇とするかは各言語で異なります。

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました