この記事では電気回路の一種であるRLC直列回路の過渡現象について取り扱います。
負荷と電源の間にあるスイッチをONにした後に生じる過渡現象は、電流と電圧の時間変化で表されます。
各種法則と関係式からそれらの式を導出する過程について、式展開が苦手な方でも分かるよう詳細にご説明します。
なお、今回は臨界減衰が生じる場合のみを対象としています。
目次
【まとめ】RLC直列回路の過渡現象を表す式(スイッチON) [3/4] 減衰振動の詳細
最初にまとめです。
対象の回路
本記事で対象となる回路はRLC直列回路で、抵抗RとインダクタL、キャパシタCの直列接続からなる負荷に直流電源を接続したものです。
RLCの負荷と直流電源の間にはスイッチSWを設けています。
このRLC直列回路のスイッチをONに切り替えることで生じる過渡現象について、以降で式導出の説明を行います。
最初に電流\(i\)、その後に抵抗、インダクタ、キャパシタの電圧\(v_R\),\(v_L\),\(v_C\)を求めます。
臨界減衰における電流
上記のRLC直列回路に関して、キルヒホッフの第2法則、オームの法則、誘導起電力の式、電荷とキャパシタンスの関係から以下が得られます。
以上よりRLC直列回路のスイッチをONにしたとき流れる\(i\)に関する微分方程式を立てることができ、解を仮定することにより解きます。
ここで、\(\alpha,\omega_0,D\)を次のように定めると、\(B\)は以下となります。
ここで\(D\)は判別式になっており、\(D\)が負,0,正いずれとなるかで解の形が変わります。
本記事では\(D\)が0、すなわち臨界減衰の場合について以降で式の導出を続けます。
臨界減衰となる\(D=0\)の条件から\(B\)を置き直し、未定定数\(A\)も時間tの関数\(A(t)\)として解を仮定し直します。
仮定しなおした解を再度微分方程式に代入し、\(A(t)\)の形を求めると、
最後に、初期状態の条件から仮定した解の未定定数\(A(t)\)が求まります。
これが臨界減衰の条件においてRLC直列回路のスイッチをONにしたときの過渡現象における\(i\)です。
線形増加するt項が含まれますが、減衰するexp項の影響が時間経過とともに強くなるため、最終的に0に収束します。
臨界減衰における抵抗の電圧
オームの法則と電流の式より\(v_R\)を以下のように求めます。
これがRLC直列回路のスイッチをONにしたときの過渡現象における\(v_R\)です。
臨界減衰におけるインダクタの電圧
スイッチをONにすることで生じる誘導起電力の式に電流の微分を代入し、\(v_L\)を以下のように求めます。
これがRLC直列回路のスイッチをONにしたときの過渡現象における\(v_L\)です。
臨界減衰におけるキャパシタの電圧
\(v_R\)と\(v_L\)が求まったので、キルヒホッフの第2法則(電圧則)より、残りの\(v_C\)を以下のように求めます。
これがRLC直列回路のスイッチをONにしたときの過渡現象における\(v_C\)です。
おわりに
以上がRLC直列回路のスイッチをONにしたときに生じる過渡現象を表す電流と電圧の式の導出となります。
各種法則と関係式、そして初期条件から求めていくことは他の過渡現象と同じです。
途中で未定定数\(A\)をtの関数\(A(t)\)として求めていくことが少しややこしい点ですね。
本記事がみなさんの理解の一助になれば幸いです。
その他
電気回路全般については以下をご覧下さい。
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