この記事ではAI社会原則を取り扱います。
AI社会原則とは何か、どこで定められたものなのか、内容は何なのかについて説明します。
AI社会原則とは
AI社会原則は、社会がAIを受け入れ適正に利用するため、留意すべき原則をまとめたものです。
ここでいう社会は特に国などの立法・行政機関を指します。
2018年5月に内閣府において「人間中心のAI社会原則検討会議」が設置され、2019年2月からは「人間中心のAI社会原則会議」として議論がなされています。
AIの社会原則はG7及びOECD等の国際的な議論に用いられています。
人間中心のAI社会原則
AI社会原則は内閣官房が公開している以下の人間中心のAI社会原則に記載されています。
人間中心のAI社会原則では、AI社会原則の他に、AI-Readyな社会、AI開発利用原則について触れられている。
AI開発利用原則はまだ定まっていませんが、その方針となるAI利活用原則は定まっています。
AI社会原則の内容
社会がAIを受け入れ適正に利用するため、社会が留意すべき原則として、以下の7項目が定められています。
① 人間中心の原則
解説
・AI は、人間の労働の一部を代替、高度な道具として人間の補助により、人間の能力や創造性を拡大することができる。
・ AIの利用にあたっては、人間が自らどのように利用するかの判断と決定を行うことが求められる。従って、利用した結果については関係するステークホルダーが分担して責任を負う。
・ AI の恩恵をすべての人が享受できるよう、使いやすいシステムの実現に配慮する。補足
ステークホルダーとは
企業・行政・NPO等の利害と行動に直接・間接的な利害関係を有する者を指す。日本語では利害関係者(りがいかんけいしゃ)という。具体的には、消費者(顧客)、労働者、株主、専門家、債権者、仕入先、得意先、地域社会、行政機関、利益団体(業界団体・労働組合等)の構成員など。
(出典:wikipedia)
② 教育・リテラシーの原則
解説
・幼時から高齢者まで、リテラシー等の教育及び学び直しの機会の提供が求められる。
・リテラシー教育は誰でも分かるようになっているべきであり、誰でも学ぶべきものである。また、教育内容にセキュリティや技術の限界に関して含めるべきである。
・社会は常に教育環境を最適な形に変化させることを意識する。教育環境にAIを活用し、落伍者を出さないことが望まれる。
・教育環境の整備に向けて、行政や学校だけでなく、民間企業や市民も主体性をもって取り組んでいくことが望ましい。補足
リテラシーとは
「読解記述力」を指し、転じて現代では「(何らかのカタチで表現されたものを)適切に理解・解釈・分析し、改めて記述・表現する。」という意味に使われるようになっている
(出典:wikipedia)
③ プライバシー確保の原則
解説
・パーソナルデータを利用した AI 及びその AI を活用したサービス・ソリューション
においては、政府における利用を含め、個人の自由、尊厳、平等が侵害されないようにすべきである。
・パーソナルデータを利用する AI は、当該データのプライバシーにかかわる部分については、正確性・正当性の確保及び本人が実質的な関与ができる仕組みを持つべきである。
・パーソナルデータは、その重要性・要配慮性に応じて適切な保護がなされなければならない。パーソナルデータの利活用と保護のバランスについては、文化的背景や社会の共通理解をもとにきめ細やかに検討される必要がある。補足
パーソナルデータとは
個人の識別性の有無にかかわらず、個人に関する情報全般をさす名称。このような個人に関する情報のうち、個人を特定、識別することができる氏名、生年月日、住所などの情報は個人情報とされ、個人情報保護法で保護されている。
(出典:コトバンク)
④ セキュリティ確保の原則
解説
・AIによる自動化で安全性が向上するが、完璧ではない。社会はそのバランスに留意し、全体として社会の安全性及び持続可能性が向上するように務めなければならない。
・社会はAIの利用に関してリスク評価、リスク低減の研究を推進し、リスク管理のための取り組みを進めなければならない。
・社会は、単一あるいは少数の特定 AI に一義的に依存せず、持続可能性に留意すべきである。
⑤ 公正競争確保の原則
解説
・新たなビジネス、サービスを創出し、持続的な経済成長の維持と社会課題の解決策が提示されるよう、公正な競争環境が維持されなければならない。
・特定の国に AI に関する資源が集中した場合においても、その支配的な地位を利用した不当なデータの収集や主権の侵害が行われる社会であってはならない。
・特定の企業に AI に関する資源が集中した場合においても、その支配的な地位を利用した不当なデータの収集や不公正な競争が行われる社会であってはならない。
・AI の利用によって、富や社会に対する影響力が一部のステークホルダーに不当過剰に偏る社会であってはならない。
⑥ 公平性、説明責任及び透明性の原則
解説
・AIの設計思想では全ての人々が公平に扱われなければならない。
・AIに関して用途や状況に応じた適切な説明が得られなければならない。
・AI の利用・採用・運用について、対話の場が適切に持たれなければならない。
・AI とそれを支えるデータないしアルゴリズムの信頼性を確保する仕組みが構築されなければならない。
⑦ イノベーションの原則
解説
・ 継続的なイノベーションのため、徹底的な国際化・多様化と産学官民連携を推進するべきである。
・大学・研究機関・企業の間の対等な協業・連携や柔軟な人材の移動を促さなければならない。
・AI に関して工学的側面、倫理的側面、経済的側面など幅広い学問の確立及び発展が推進されなければならない。
・データが独占されることなく国境を越えて有効利用できる環境、及び、コンピュータ資源や高速ネットワークが共有して活用されるような研究開発環境が整備されるべきである。
・政府は、AI 技術の社会実装を促進するため、あらゆる分野で阻害要因となっている規制の改革等を進めなければならない。
その他
法令・社会動向全般については以下をご覧下さい。
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